日本一を誇る 浜松シラス特集
浜松舞阪港から水揚げされ、漁獲量は日本一。
今日も100艘の船が出て、町には天日干しの風景が広がって…。
浜松ブランドを誇る遠州灘産シラス、美味しさの秘密を探ります。
白色という見た目から「白子(しらす)」と呼ばれる真イワシ・カタクチイワシの赤ちゃん、シラス。遠州灘では、毎年3月21日から翌年1月14日までシラス漁が解禁となります。
天竜川・大井川の大河川が流入し、汽水湖である浜名湖とも通じている遠州灘は、塩分が薄くなりたくさんの動物性プランクトンが発生。そのプランクトンを食べる為にシラスは群れとなって集まっているのです。
漁の最盛期は5〜7月上旬。そう、今の季節は豊漁です。
漁に出る船の数、日本一!
舞阪港では2艘の船で対を成して群れたシラスを捕る、という独自の「2艘引き漁業」が行われています。朝4時に漁師は港に集まり船を出す。水揚げ量が日本一なら、100艘もの船が出るのも日本一。"漁場”に近い舞阪港は「鮮度が命」のシラス漁には最適の港といわれます。
日の出を待って朝6時、大きな網を下ろし漁は始まる。
港に戻った船から次々と揚げられるシラス。多い時で一日に約35キロ入りの青いカゴが2726カゴにもなるという(今年4月2日の記録)。仲買いさんたちによる競り。漁から戻る船が着く度に威勢は高まるばかりです。
舞阪港に集まる16名の仲買いさんの加工場は、そのほとんどが町内。
競り終えたばかりのシラスは、湯気を立てた窯の待つ加工場へと急いで運ばれるのです。
船が出ている間は競りが繰返され、港と加工場とのトラックの行き来は続く。
熱に弱く、鮮度がすぐ落ちてしまうシラスにとって、加工までのこの速さが舞阪産のおいしさの秘密というわけです。
しらすの鮮度の見分け方
競りでは、仲買いさんの鋭い目が光る。透き通るように透明であることと、小さな魚のあの小さな"目"。白目と瞳の輝きと、触った感触からイキを見極める。窯揚げシラスでは、太めの針程の細さで全身がまっすぐに湯で揚がり、体長は3cm程度。混じり物のない真っ白いものが上等品といわれます。
遠州灘の荒波にもまれたシラスは、身が締まっておいしいと定評があり、今や「舞阪産」はブランドとして高い価値を持っています。
鮮度をそのままに 窯揚げしらす
港からトラックで5〜6分。つまり、船から揚がってものの10分で到着したのは堀江芳一商店加工場。工場内の沸々と揺れる窯の真横までトラックは荷台を横付け。沸き過ぎれば香りが飛び、火が弱すぎても生煮えとなって臭みの原因になるというシラスの窯揚げが始まりました。大型機械を導入したことで、塩分濃度約3%、時間にして約3分という、加工へのスピードも実現。「茹でる」「選別する」「蒸籠に乗せる」があっという間の作業。
白く艶やかに、プワっとふくらむ。海の香を残した真っ白な窯揚げシラスへと姿は変わっていくのです。
舞阪名物 しらす干しの風景
塩茹でしただけの「窯揚げシラス」の美味しさも人気ですが、太陽を浴びた「シラス干し」の旨さも格別です。堀江宏明さんで3代目と継ぐ堀江芳一商店では、機械化されていく中でも、この伝統的な「シラス干し」へのこだわりは変わらない。港に通じる通りの激しい国道から、たった一軒奥に入っただけで景色は一転。静かな空気が流れる「天日干し」が繰り広げられているのです。
太陽の光り、風の強さ。毎日変わる天候を手の感触で感じ分けて干し時間を加減するのが、シラス干しの名人といわれる宏明さんの母、堀江悦子さん。
「今の時代は乾燥機に頼るところも多いけれど」と前置きしながら「太陽の光を浴びて自然に乾燥させると余分な水分だけが抜けて旨味がギュッと凝縮、風味が良く甘みも引き立つんですよ。栄養価も高まるし」。両手を広げた程の大きな蒸籠が順に干されると一面で750枚。それが2〜3回転と繰返され、一日で1600枚もの作業となる。
窯揚げ、若干しシラス…、すぐ向かいに販売店を構える堀江芳一商店には、出来たて・作り立ての美味しさを求めるお客さんも多い。水揚げされてから店頭に並ぶのに2時間と掛かっていない。これぞ産地ならではの美味しさです。
問合せ先 /
堀江芳一商店
浜松市舞阪町543-5 tel 053-592-0172
シラス加工、関東と関西の違い。
窯揚げしたシラスを天日で干す。関東は「若干し」で、1時間程度干すことで半乾きのしっとりとしたシラスに。関西は2〜3時間干して水分を抜いた「上干ちりめん」に。シラスといっても地域によって好みは変わり「干し方」の強さに違いがあるのです。主に関東はしっとりタイプ、関西はカリッとした「じゃこ」、上干ちりめんが好まれています。
- 取材協力
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今回の取材では、堀江芳一商店さん、舞阪漁港の皆さんのご協力を頂きました。
ありがとうございました。